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2022.08.26
耐震診断は、既存の建造物の構造的強度を調査し、想定される地震に対する安全性や被害規模を確認するための行為です。
地震による損傷、倒壊の可能性を把握し、地震による被害を未然に防ぐ目的で行われます。
現在、新しく建造物を建てる場合は、国が建築基準法によって定める耐震基準を満たしている必要があります。
耐震基準は特に(1981年)昭和56年に改正された新耐震基準と、それ以前に制定されていた旧耐震基準とで区別されます。
新耐震基準では、数十年に一度発生する規模の地震では軽微な損傷で済み、数百年に一度発生する規模の地震では倒壊や崩壊等しないことが義務付けられています。
これは1978年に発生した宮城県沖地震における家屋倒壊が理由で改正が行われました。
この地震はマグニチュード7.4、仙台市では最大震度5を記録しました。建物の全半壊は7400戸に上り、より厳しい耐震基準への引き上げが行われました。
旧耐震基準は(1950年)昭和25年から施行され、新耐震基準に改正される(1981年)昭和56年5月31日までに建築確認が行われた建物に適用されました。
旧耐震基準は、震度5強程度の揺れにより建造物が倒壊せず、損傷を受けた場合でも補修することで生活が可能な構造基準として設定されました。
技術的には、建物自重の20%の地震力を加えた場合に、構造部材に生じる応力が構造材料の許容応力以下であるかどうかで判断されます。
震度5強以上の地震に対して定めたものはなく、震度5の地震で倒壊に至らなかった場合でも、損傷を受けている可能性があるというものでした。
旧耐震基準では、大規模地震に対する基準は設定されていませんでした。
新耐震基準では大規模地震で倒壊、崩壊等しないことを目的に検証を行うことが定められました。
新耐震基準となった後にも、平成12年にはさらに厳しい耐震基準への改正が行われています。
2000年(平成12年)基準とも呼ばれ、1995年に発生した阪神淡路大震災の被害状況から改正が行われました。
この改正では、以下のような内容が義務付けられました。
・地盤が重さを支える力に応じた基礎の設計
・接合金物の指定
・計算に基づいた耐力壁の配置
耐震基準が引き上げられた現在でも、旧耐震基準で建てられたマンションなどの建造物は流通しています。
新耐震基準は(1981年)昭和56年6月1日より施行されています。
しかし、この日以降に完成した建造物が全て新耐震基準となっているとは限りません。
建物を建築する場合、検査機関による建築確認を受ける必要があります。
新旧どちらの耐震基準によって建築確認が行われたかは、建築確認申請日によって違います。
建築確認申請日は建築確認証や検査済証で確認できます。
旧耐震基準から新耐震基準への改正が行われたことで、地震に対する安全性は向上しています。
しかし、新耐震基準に改正された後にも、2000年改正が行われるなど、地震に対する基準に絶対的なものはありません。
また、建築基準法で定められる耐震基準は、人命を守るための最低限の決まりであり、基準を満たしたからといって地震に対する備えが万全であると言い切ることはできません。
耐震基準だけにとらわれず、どのような施工が行われているか、地盤は安全であるかなど複数の項目にわたって確認する必要があります。
耐震診断を行うことで、その建造物がどの程度の地震に耐えることができるかを数値で表すことができます。
新耐震基準では建造物が保有する水平方向の耐力を指す保有水平力で耐震性能を判定しますが、旧耐震基準で建築された建物では保有水平力での耐震性能の判定を行うことができません。
そのため、安全の判定基準はIs値、Iso値という指標が使われています。
Is値がIso値以上であれば新耐震基準における耐震性能を有すると判断されます。
Is値とは、Seismic Index of Structureの略称で構造耐震指標のことです。
Is = 保有性能基本指標 × 形状指標 × 経年指標 で算出されます。
「保有性能基本指標」は建物が保有している基本的な耐震性能の指標のことです。
「形状指標」は平面・立面形状の非整形性を考慮する指標です。
「経年指標」は経年劣化を考慮する指標となっています。
構造耐震判定指標です。
Iso = 耐震判定基本指標 × 地域指標 × 地盤指標 × 用途指標 から算出されます。
耐震判定基本指標は第一次診断で0.8、
第二次・第三次診断で0.6と定められています。
「地域指標」とは地域の地震活動度合いや想定される地震動の強さによって定められた指標のことです。
「地盤指標」は表層地盤の増幅特性、地形効果、地盤と建物の相互作用等によって定められた指標です。
「用途指標」は建物の用途等によって定められた指標を表します。
主な構造が鉄骨造である場合に建物が持っている、地震による水平方向の力に対する強さをいいます。特に学校施設では1.0以上への補強が求められています。
主な構造が鉄筋コンクリート造の場合に建物が持っている、地震による水平方向の力に対する強さを表します。
累積強度指標と、形状指標の積で算出されます。
第2次診断、第3次診断では、CT・SD値が0.3以上であることも求められます。
安全の判定基準であるIs≧0.6における0.6という数値は1968年に発生した十勝沖地震、および1978年に発生した宮城県沖地震において中破以上の被害を受けた鉄筋コンクリート造の建造物の、二次診断の結果を比較して導き出されています。
Is値が0.6以上の建造物では中破以上の被害が生じておらず、Is値が0.6を下回ると数値が下がるに従って被害を受ける可能性が高くなります。
また、文部科学省では学校施設のIs値は0.7以上を求めています。
Is値0.3未満、またはq値0.5未満の場合、大規模な地震の震動、および衝撃に対して倒壊、崩壊等する危険性が高い建物となります。
Is値0.3以上、またはq値0.5以上1.0未満の場合、大規模な地震の震動、および衝撃に対して倒壊、崩壊等する危険性がある建物となります。
Is値0.6以上、かつq値1.0以上の場合、大規模な地震の震動、および衝撃に対して倒壊、崩壊等する危険性が低い建物となります。
比較的、耐震壁が多く配置された建造物における耐震性能評価を目的とした診断法です。
最も手軽な方法で、対象となる建造物の柱、壁の断面積と、その階が支えている建物重量から構造耐震指標を評価します。
比較的壁の多い建造物に適した診断方法ですが、壁の少ない建造物では耐力が過小評価されるため適していません。
設計図面があれば、建造物の詳細な調査を行う必要がなく、短時間で計算できます。
梁よりも、柱や壁などの鉛直部材が先行して破損する建造物における耐震性能評価を目的とした診断方法です。
柱・壁の強度や靭性が考慮されますが、梁は考慮せずに行われます。
また、設計図面が残されていることが前提の診断方法です。
各階の柱と壁のコンクリートと鉄筋の寸法から終局耐力を計算し、その階が支えている建物重量と比較します。
コア抜きしたコンクリートの圧縮強度・中性化等の試験、建造物におけるひび割れ・漏水・鉄筋錆び・コンクリート爆裂などの劣化状態の調査が必要となります。
第1次診断より結果の信頼性が高いため、学校や庁舎などの公共建築物で最も多用されています。
柱・壁の強度や靭性に加え、梁まで考慮した診断方法です。
第2次診断と同じく、設計図面が残されていることが前提となります。 柱、壁、梁を考慮して計算されます。
現行の建築基準法の保有水平耐力計算と殆ど同程度の水準で建造物の終局耐力を計算する方法ですが、保有水平耐力の計算上の仮定に最も左右されやすいため、計算結果の通りに建造物が終局耐力に達するかについては、十分注意して判断する必要があります。
主に高層建築や、鉄骨造が対象となります。
耐震診断は「今、建っているもの」に対して必要です。
旧耐震基準で建てられた建造物は、耐震性能が不足しているものが多数あり、1995年に発生した阪神淡路大震災においても被害が集中しました。
そのため、旧耐震基準で設計された建造物に対して、耐震診断が行われています。
耐震診断は、既存の建造物で旧耐震基準によって設計されるなどにより、十分な耐震性能を保有していない建造物を、現行の新耐震基準と比較して耐震性能の判定を行います。
建築基準法によって定められた耐震基準は幾度も改正が行われていますが、建築基準法の改正に伴って既存の建造物の耐震構造の見直しや補強が必要となります。
耐震改修促進法の中では、1981年以前に設計された建築物は耐震診断、耐震改修を行うように求められていますが、罰則はありません。
また、耐震改修促進法に基づいて耐震補強を行った場合、建築基準法の耐震に関わらない既存不適格の部分に対して遡及を求めない、補強のための鉄骨には耐火被覆を行う必要がないなど、耐震改修に対する敷居は低くなっています。
耐震診断の結果、耐震性能が現行水準に達していないと判定された場合、耐震改修を行う必要があります。
耐震改修を進めるための設計を耐震補強設計といいます。
耐震補強設計は、目標の耐震性能に加えて、建物の設備や使い勝手、耐震改修工事の費用、工期など複数の要素を考慮して設計されます。
耐震性能の補強工事が必要となった場合、目標性能に応じて複数の補強案を検討します。
補強工事は既存の柱、梁、壁などの構造体を補強する形で行われるため、意匠や機能性に大きな影響を与えることが考えられます。
施工条件によっては工事費も変わってくるので、補強案を決定するには総合的に判断することが必要となります。
家族構成やライフスタイルの変化によって、増改築等のリフォームが必要となった場合、リフォームと併せて耐震改修を行うことができます。
木造の住宅である場合、柱や梁などの構造部材が不朽やシロアリ被害等によって劣化してしまう可能性があります。
部材が劣化してしまうと耐震性能は低下するため、日頃から屋根、外壁、基礎のひび・欠損、内装におけるシミなどの雨漏りの兆候、床下等にいける蟻道の有無の点検、床下の換気などを心がけることが重要です。
また点検等によって異常が見られた場合は、適切な補修などの対策を行うことが必要です。
地震が発生した場合、建築物に損傷がなくとも家具等の転倒や散乱などによる、避難の遅延や家具の下敷きになるといった二次被害を未然に防止することも重要となります。
家具や電化製品などの転倒防止のために金物等による固定を行う、家具等のガラス部分の飛散防止対策を行う、大型家具・電化製品の配置を避難経路から離れた場所にしておく等の安全点検によって地震に対する備えを強化しておくことが必要です。
世界で発生するマグニチュード6以上の地震のうち20%が日本とその周辺地域で発生しています。
また人間の体で感じられる震度1以上の有感地震は、1年間に1000~2000回程度発生しています。
日本とその周辺地域では、南海トラフ沿いをはじめとする大地震がいつ、どこで発生してもおかしくないと認識されています。
突然発生する大地震に遭遇しても命や生活を守るために、地震に対する意識を高く持ち、日頃の安全点検につとめる、住宅の耐震性能を把握し、適切なものにするなどの取り組みが重要となります。
大海建設では、お客様の住まいの安全を守るために耐震等級3を水準として、耐震に優れたテクノストラクチャー工法を導入するなど、長く安心して住み続けられる住宅を建てるための取り組みを行っています。
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