Column
2022.07.25
地震多発地域である日本には、独自の耐震基準が存在します。
耐震基準は過去に発生した大地震を研究・調査した結果によって改正をしていきました。
そんな中で発生した2016年の熊本地震において、それまでの耐震基準を満たしていた住宅は、どのような被害を受けたでしょうか。
家を建てようとする際、子育てや家事を中心に間取りを考え、デザイン性も重視されます。
もちろん大事なことですが、そもそも住まいの本質とは
「住み続けるための投資」
です。
このためには事前調査と家づくりの計画が重要です。今回は、熊本地震から学んだ対策資料としてご覧ください。
熊本地震は2016年4月14日21時26分以降に熊本県と大分県で相次いで発生した地震を指します。
気象庁震度階級では最大にあたる震度7を観測する地震が4月14日21時26分、熊本県熊本地方においてマグニチュード6.5の地震が発生し、熊本県益城町で気象庁震度階級では最大にあたる震度7を観測しました。
続いて4月16日1時25分には同地域でマグニチュード7.3の地震が発生すると、熊本県益城町および西原村で震度7を観測しました。
国内で震度7を観測した事例としては、1995年に発生した兵庫県南部地震、2004年に発生した新潟県中越地震、2011年に発生した東北地方太平洋沖地震に次いで、4例目と5例目にあたります。
また、震度7となる地震が同一地域で連続して観測されたのは、現在の気象庁震度階級が制定された1949年以降初めてのことでした。
熊本県益城町で観測された揺れの大きさは計測震度6.7であり、東北地方太平洋沖地震の際に宮城県栗林市で観測された計測震度6.6を上回り、国内観測史上最大のものとなりました。
熊本県外においても14日の地震では宮崎県で震度5弱、その他九州各県と山口県で震度4を観測しました。
16日の地震では、大分県で震度6弱、福岡県、長崎県、佐賀県、宮崎県で震度5強、鹿児島県、愛媛県で震度5弱、山口県、鳥取県、島根県、高知県で震度4を観測するなど、この地震の影響は、九州を中心として広範囲に及びました。
さらに地震発生後、熊本県および大分県において地震活動が活発化し、4月だけでも
最大震度6強の地震が2回、
最大震度6弱の地震が3回
震度5強の地震が4回、震度5弱の地震が8回発生しました。
その後、同年6月と8月にも震度5弱の地震が観測されるなど地震活動は継続しており、内陸型地震における一連の地震発生回数は1995年以降で最多となっています。
2016年4月14日に、熊本県熊本地方を震央とした、
震源の深さ11㎞、
マグニチュード6.5規模
の地震が発生しました。
益城町では震度7が観測され、当初はこの地震が本震と想定されていました。
初の地震発生後の28時間後に、熊本県熊本地方を震央とした
震源の深さ12㎞、
マグニチュード7.3
の地震が発生しました。
益城町と西原村で震度7が観測され、最初の地震が前震で、この地震が本震であるとの見解が発表されました。
マグニチュード7.3は1995年に発生した兵庫県南部地震、阪神淡路大震災と同規模の地震です。
当初の発表から訂正される形で本震、余震が入れ替わる事態は東北地方太平洋沖地震などの海溝型地震でも起こっていました。
しかし、内陸型地震においてマグニチュード6.5以上の地震発生後、さらに大きな地震が発生したのは、日本における地震の観測史上初めての事例であり、また同じ地点で震度7が2回観測されたことも初となりました。
次に熊本地震によって倒壊などの被害を受けた建物は、
が確認されています。
その他にも床上浸水114棟、床下浸水156棟、公共施設の被害467棟が確認されました。
住宅等の被害は建築基準法が改正される1981年以前に設計された古い木造建築に集中していた他、九州における台風対策として重い瓦を使用していた住宅が多かったことも被害拡大の要因となりました。
前震と本震で合わせて2度の震度7を観測した益城町では耐震基準改正後にさらに強化された2000年以降に建てられたと見られる住宅においても全壊がありました。
当時は住宅1つ1つに、被害の規模を示す赤・黄色の札が貼られていました。
生々しくヒビが入っていたり、青いビニルシートで雨漏りを防いでいたのを思い出します。
改正後の耐震基準では震度6強から7の地震でも倒壊や崩壊等をしない水準を求められて設計されますが、短期間で強い揺れに2度襲われることは想定されていませんでした。
熊本地震において、住宅の倒壊や土砂崩れに巻き込まれるなどによって合計50人の死亡が確認されています。
前震発生から本震発生までの期間には9人の死亡が確認されていました。
本震による直接的な被害の大きさがうかがえます。
また、50人のうち家屋の倒壊による死者は前震で7人、本震30人と合計37人にものぼりました。
避難生活によるストレスや持病の悪化などが原因の震災関連死も相次ぎました。
自治体により熊本地震による震災関連死と認定された人は218人にものぼっています。
家屋の倒壊に直接巻き込まれなかったとしても、住宅の損害はその後の生活に大きな影響を与えます。
地震と隣り合わせの日本だからこそ、高い水準の耐震性能がいかに重要であるのかを物語っています。
建築基準法の耐震基準では、住宅などを新築する場合、耐震等級1以上であることが義務付けられています。
耐震等級には2つの考え方があり、
ひとつは損傷防止です。 一度以上は遭遇する可能性の高い震度5程度の地震に対して、大規模工事による修復を要するような被害が出ない程度の耐震性が求められます。
もうひとつは倒壊等防止で、遭遇する可能性は低めの震度6強以上の大規模な地震を受けても人的被害がでない程度、建物が倒壊、崩壊しない耐震性を水準としています。
熊本地震においても現行の耐震基準の有効性が確認されたとされ、熊本地震後に改正は行われませんでした。
しかし、熊本地震のように複数回の強い地震に対する基準は設定されておらず、この事実は耐震を意識する際に、正しく認識しておくことが重要です。
熊本地震では益城町で震度7が2回観測されるほか、余震においても震度6強の地震が2回観測されるなど、大地震が続けて発生しました。
前震で倒壊に至らなかった建物でも、続けて発生した本震で倒壊してしまうなどの被害も起きていました。
そのような被害が起きる中、耐震等級3で設計された家屋は倒壊なし、約9割が無被害でした。
耐震性能を表す耐震等級において、震度6強以上の大地震は百年に一度発生する可能性が高いものとして位置づけられることがあります。
誤解してはいけないのが、百年に一度というのは同一地域においての発生頻度であり、またその頻度も絶対的な数値ではないということです。
事実、2011年からの10年間、日本で震度6強を超える地震は10回以上発生しており、また熊本地震のように同一地域内でも短期間に複数回の大地震が発生している例もあります。
耐震基準で定められた耐震等級1では、一度の地震に対しその有効性は認められるものの、想定外の事態となると安全と言い切ることは難しいことがわかります。
熊本地震の被害状況、調査結果を考えると、安心して暮らせる家であるためには耐震等級3であることが必要であると考えられます。
一度の地震では倒壊しない耐震等級1や2の住宅であっても、2度目の地震で倒壊してしまったり、倒壊の可能性を考慮して避難せざるを得ない状況になったりしてしまうことは想像に難くありません。
実際に、熊本地震でも前震による倒壊を免れた家屋に滞在し続け、本震による倒壊に巻き込まれてしまった事例がありました。
避難生活によるストレスや持病の悪化等による震災関連死を含めると、地震による直接の被害で人命が守られたとしても、その後の生活が守られなければ、本当に人命を守ったとは言えないでしょう。
このように「くらし」が人命に多大な影響を及ぼすことがわかります。
家のデザインも大切ですが、家の本質は住み続けることにあります。
家族が健康で安全な暮らしを送るために複数回の地震に遭遇しても被害が軽微で済ませられる家が必要です。
震災後も安全な暮らしを継続するためには耐震等級3であることが推奨されます。
耐震等級3を取得する方法には簡易的な壁量計算と精度の高い構造計算の2つがあります。
2階建て以下の木造建築物においては構造計算を行うことは義務付けられておらず、壁量計算による方法も認められています。
壁量計算の場合、間取りのX軸とY軸で耐力壁の量が十分であるかを検証します。
しかし、構造計算とは違い、建物にかかる固定荷重や積載荷重、積雪荷重、風荷重、地震荷重といった荷重を想定し構造部材に生じる抵抗力の計算は行われません。
また壁や柱の配置バランスまでは検証が行われず、荷重が偏った場合の耐力までは計算されていません。
そのため、壁量計算によって耐震等級2や3が認められた場合でも、実際に構造計算を行った場合、構造計算による耐震等級1や2よりも耐震性能が劣ってしまう可能性があります。
表示上は同じ耐震等級でも、実際の耐震性能は全く別の水準となるので注意が必要です。
壁量計算と構造計算の違いを理解し、自分が納得できる安心して長く暮らせる家を建てるための正しい選択をすることが重要です。
耐震等級には1から3までの水準があります。
耐震等級1は現行の新耐震基準で求められている性能です。
耐震等級2は等級1で想定される地震の1.25倍の荷重に耐える性能、耐震等級3は等級1で想定されている地震の1.5倍の荷重に耐える性能とされています。
耐力壁は水平方向からの荷重に対する抵抗力を持った壁のことです。
筋交いや構造用面材などにより壁の強度を高めてあります。
耐震等級と壁量の関係で、勘違いされやすいのが必要量です。
耐震等級2は耐震等級1の1.25倍の耐震性能ですが、耐力壁を1.25倍で良いというわけではありません。
実際には耐震等級1から等級2へ引き上げるためには約1.6~1.8倍の量が必要となります。
また耐力壁は、配置バランスも重要で、間取りにおいて極端に壁が少ない部分があると、建物が倒壊する原因にもなります。
上下階の柱や壁の位置が同じである割合を指す直下率にも注意します。
直下率が低いと建物のバランスが悪いことになり、倒壊する危険性が高まります。
地震による被害を低減する方法には耐震のほかに制震、免震と呼ばれるものがあります。
耐震構造は、建物自体の強度により地震の荷重を耐える構造です。
強度により損傷を低減しているだけなので、震災後にはメンテナンスが必要となります。
制震構造は、建物内部に制震装置を設置することで、地震による荷重を吸収する構造をいいます。
建物への荷重を制震装置によって吸収するため、震災後のメンテナンスを必要とせず、複数回の地震に対して性能を発揮できます。
免震構造は、建物と地盤を絶縁し、地震による荷重を建物に伝えないことを目的とした構造です。
建物の構造に対する被害を低減できるほか、建物内における家具等の転倒など、二次被害を抑制できます。
免震装置はコストが高く、また建物と地盤を絶縁する性質上、大掛かりな工事になりやすいです。
そのため、耐震構造に加えて更なる備えをする場合、制震構造がおすすめできます。
建築基準法では、鉄筋コンクリート造や鉄骨造のビル、マンションなどの建物、3階建て以上の木造建築を行う場合、構造計算を行うことを義務付けられています。
しかし2階建て以下の木造住宅では構造計算が義務付けられておらず、簡易的な計算と仕様規定を満たしていることだけが義務付けられています。
全ての建築物に対して安全な構造物であることが求められますが、2階建て以下の木造住宅のような建築物では、正確な安全性の検証が求められていないため、安全である保証がありません。
構造計算が行われない理由として、義務化されていないことに加えて、手間やコストがかかること、構造計算を行うスキルを持った人材の不足などが挙げられます。
大海建設は、耐震等級3を基準とし、耐震性の高いテクノストラクチャー工法による災害に強い家づくりを行っています。
また建築する全ての棟に対して、義務化されていない構造計算を行っています。
メンテナンス時を配慮した設計で、長く快適に住み続けられる家づくりとサポートを行っていますので、まずはご相談からでも結構です。
ご意見をぶつけて頂いても構いません。
耐震のプロフェッショナルが事案を紹介し、住み続けるため「くらし」のご提案をいたします。
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